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午前2時
世界が、人間を前提にしていない
午前2時。
この時間は、夜の中でも特異だ。
まだ明け方ではなく、もはや夜半でもない。
世界が「人間を前提にしていない」時間。
街灯は必要以上に明るく、その光は誰のためでもなく、ただ点灯し続けている。
歩くと、足音が過剰に響く。音が、こちらを監視しているように思える。自分が存在していること自体が、この時間には不自然だ。
建物は眠っているのではない。用途を忘れている。コンビニの看板だけが、意味を持ちすぎた記号として浮いている。
考えは勝手に深くなる。理由もなく過去が呼び戻され、どうでもいいはずの言葉が、なぜか核心のような顔をして現れる。
不安はある。だが恐怖ではない。
むしろ、誰にも見られていない自由がある。
この時間なら、取り返しのつかないことを考えても、まだ実行に移さなくて済む、という猶予。
午前2時は、感情が行動になる直前で、ぎりぎり踏みとどまっている場所だ。
だからここでは、決断は生まれない。ただ、決断の素材だけが、静かに積み上がる。
世界は続いている。だが、自分が続く必要があるかどうかは、まだ保留されている。
深夜2時とは、続く理由も、立ち止まる理由も、どちらもまだ確定していない、唯一の時間だ。
—— 観測終了。