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午前0時
日付だけが、先に変わる
午前0時。
日付だけが、先に変わる。
世界はまだ、夜になりきっていない。けれど、昼の側にも戻れない。
時計は、何かが終わったような顔をしている。だが身体は、まだ昨日のままだ。
部屋の灯り。洗面所の水音。閉じきらない画面。テーブルの上に残ったコップ。
それらはすべて、今日から置き去りにされたものではなく、まだ昨日に属している。
午前0時は、夜の始まりではない。
一日が、形式だけで終わらされる時間だ。
生活はまだ続いている。人もまだ起きている。街も完全には沈んでいない。
それでも、日付はもう変わってしまった。
この時間には、奇妙な置き換えが起きる。終わっていないものが、終わったことにされる。始まっていないものが、始まったことにされる。
だから午前0時の不安は、深くない。まだ抽象的でもない。もっと事務的で、もっと静かな違和感だ。
今日を終えたはずなのに、何も片づいていない。明日になったはずなのに、何も始まっていない。
この時間に浮かぶ思考は、反省ではなく、未処理の点滅に近い。
返信していない言葉。閉じていないタブ。決めないまま残したこと。忘れたふりをした予定。
それらが、責めるほど強くはなく、消えるほど弱くもなく、ただ画面の隅で明滅している。
まだ社会は眠りきっていない。だが、昼の言葉でこの時間を呼ぶことも、もうできない。
午前0時には、人間の作った区切りだけが、世界に先行してしまう。
夜はここから始まるのではない。ただ、昼がもう自分を名乗れなくなる。
午前0時とは、生活がまだ続いているのに、日付だけが先に死ぬ時間。
—— 観測終了。